小児における口腔粘膜疾患
アフター性口内炎

- [好発年齢・性差]
- 特にない
- [好発部位]
- 舌、頬粘膜、上下口唇粘膜、口蓋歯肉、歯肉頬移行部の順に好発する。
再発性アフタの場合は1〜3ヶ月周期で起こることが多い。 - [症状]
- 周りが赤く輪郭の明瞭な小さな円形の口内炎で、痛みが強い。発熱などがみられる場合と、全身症状はなく口内炎だけがみられる場合もある。原因は不明。食物アレルギーやビタミンの欠乏、ストレス、咬傷などが誘因となる。
- [治療]
- 強い痛みへの対症療法が中心となる。口腔内の洗浄と消毒を行い、場合によっては抗菌薬入り軟膏や副腎皮質ステロイド軟膏を処方する。
リガ・フェーデ病

- [好発年齢・性差]
- 新生児あるいは乳児期にみられる。
- [好発部位]
- 舌小帯部や舌尖下部
- [症状]
- 生まれつき生えている歯(先天性歯)や早期に生えてきた下の前歯(下顎乳中切歯)のとがった切縁の機械的刺激によって褥瘡性潰瘍(じょくそうせいかいよう、表面がグチュグチュした潰瘍)や硬結がみられる。接触痛、自発痛により、哺乳や摂食障害が起こる。
- [治療]
- 原因となっている歯のとがっている部位の削合や抜歯を行い、潰瘍面の消炎を促す。
ベドナーアフタ

- [好発年齢・性差]
- 新生児期にみられることが多い。
- [好発部位]
- 口蓋粘膜にみられる。
- [症状]
- 硬口蓋粘膜に不定形の潰瘍がみられる。硬い哺乳瓶の乳首、目の粗いガーゼなどで 不注意な口腔清掃などの機械的刺激を与えたことによってできる。周囲に発赤を伴い、痛みがあるため授乳困難となることがある
- [治療]
- 原因となっている刺激を取り除く。刺激がなくなると自然に治癒する。副腎皮質ステロイド軟膏を塗布し、痛みや炎症を抑えることも有効となる。
粘液嚢胞

- [好発年齢・性差]
- 3歳~12歳にみられることが多い。
- [好発部位]
- 下唇、頬粘膜、舌の裏側(舌下面)が多く、口蓋や歯槽部、上唇には少ない。
口腔粘膜にできる嚢胞のうちで、最も多く約40%を占める。 - [症状]
- 粘膜面から半球状に小豆大から大豆大の粘液を内部に貯めた袋状の病変(嚢胞)を生じる。消失や再発を繰り返すことが多い。口底部に生じた大きな粘液嚢胞はラヌーラ(ガマ腫)とも呼ばれる。
- [治療]
- 自壊を繰り返し、自然消失することもあるが、再発し腫脹が機能的、審美的に問題となる場合には、小さいものは周囲の小唾液腺を含めて切除する。ラヌーラ(ガマ腫)では舌下腺の全摘出や開窓術を行う。
萌出性嚢胞

- [好発年齢・性差]
- 歯が生える頃(乳児期あるいは幼児期、永久歯前歯が生える学童期にもみられることがある)
- [好発部位]
- 第一乳臼歯、第二乳臼歯に多くみられる。
- [症状]
- 歯ぐきの歯の生える部分に、青又は紫色の柔らかい膨らみができることがある。 これは、歯を包んでいる袋と歯の間に血液成分溜まってできたものである。
- [治療]
- 歯が生えてしまうと自然に治るので、特に治療の必要はない。
地図状舌

- [好発年齢・性差]
- 1歳〜6歳にみられることが多い。
- [好発部位]
- 舌背にみられる。
- [症状]
- 舌の表面にまだらな模様ができる。
またこのような変化は日によって位置、形態、広がりを変えるのが特徴である。
原因は不明であるが、内分泌障害,体質異常,ビタミンB欠乏などが原因の一部と考えられている。糸状乳頭の欠如(赤色)と滲出堆積物(乳白色)がみられ、地図のようにみえる。痛みや痒みはほとんどないがミルクや離乳食がしみることもある。 - [治療]
- 特に治療の必要はない。
一方、刺激物で舌がしみる、痛みが続く、全身症状を伴うなどがあれば歯科医院への受診を勧める。
黒毛舌

- [好発年齢・性差]
- 特にない
- [好発部位]
- 舌背にみられる。
- [症状]
- 舌背の糸状乳頭が角化・肥厚し,細かい毛の生えたような外観を呈する。外因性色 素沈着の一種であるが、自覚症状はない。何かしらの原因で口腔内にカンジダ菌が繁殖すると硫化化合物が生じ、これが血液中のヘモグロビンと結びついた結果、舌表面が黒色になる。 原因としては 抗菌薬やステロイド剤の長期服用、菌交代現象によるロ腔内細菌叢の変化である。
- [治療]
- 口腔内清掃、含嗽剤の使用が有効である。カンジダが原因の場合には抗真菌薬入りの軟膏、内服薬を処方する。 ドライマウスが原因の場合は水分補給や唾液腺マッサージなどで唾液分泌を促進させる。
溝状舌

- [好発年齢・性差]
- 特にない
- [好発部位]
- 舌背にみられる。
- [症状]
- 舌背表面に長さや深さが様々な溝が多数みられる。 自覚症状はないが、溝の部分に食渣が停滞しやすく炎症を起こすことがある。 原因としては、先天性(ダウン症候群)と後天性(悪性貧血やビタミンB欠乏)がある。
- [治療]
- 痛みや味覚異常がなければ特に治療の必要はない。 口腔内を清潔にして、舌磨き専用スポンジなどを使用する。
歯肉嚢胞(上皮真珠)
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- [好発年齢・性差]
- 新生児あるいは乳児期
- [好発部位]
- 歯ぐきや上あごの天井(口蓋)にみられる。
- [症状]
- 白から乳白色の丸い粒で、直径は1〜3mm程度である。1個から数個のこともあれ ば、数個集まって歯ぐきがデコボコしてみえることもある。 原因としては、赤ちゃんがお腹の中で成長する際、歯や口の組織が作られる過程で 余った組織の成分(上皮細胞)が吸収されずに残り、角質化したものである。
- [治療]
- 痛みはなく、 赤ちゃんが痛がったり、ミルクが飲めなくなったりすることはない。数週間から数ヶ月で自然に剥がれ落ちたり、吸収されたりして消えてしまうため、治療の必要はない。気になって指やガーゼでこすり取ろうとすると、デリケートな粘膜を傷つけ、細菌感染の原因になるため、そのままにしておく。
先天性エプーリス

- [好発年齢・性差]
- 新生児の歯ぐき(歯槽堤)に生まれつきみられる非常にまれな良性腫瘍である。
女児にみられることが多い。 - [好発部位]
- 上顎の前歯部に多くみられるが、発症頻度は非常に低い。
- [症状]
- ピンク色〜赤色の腫瘤で、球状または有茎性(くびれでぶら下がる形)を呈し、大きさは数mmから数cmまで様々である。 通常は痛みがなく、腫瘤が大きい場合は、哺乳障害、口唇閉鎖不全、まれに呼吸障害を起こすことがある。 原因は不明であり、ホルモンや遺伝との関連も明確ではない。
- [治療]
- 出生時の視診で疑われ、必要に応じて病理組織検査で確定診断を行う。哺乳や呼吸に問題がなければ経過観察することもある。機能障害がある場合は外科的切除が行われる。切除後の再発は極めてまれである。切除後の経過は良好で、歯の発育や顎の成長への影響はほとんどみられない。
急性疱疹性歯肉口内炎(きゅうせいほうしんせいしにくこうないえん)
- [好発年齢・性差]
- 主に乳幼児期に発症する。
- [好発部位]
- 歯肉、頬粘膜、舌である。
- [症状]
- ウイルス感染による口の中と歯ぐきの強い炎症で、原因は多くの場合、単純ヘルペ スウイルス1型(HSV-1)である。 高熱(38〜40℃)がみられ、歯ぐきに強い赤み・腫れ・出血がある。 口の中や唇に小さな水ぶくれ・ただれがみられ、強い痛みで食事や水分がとれない ことがあるため、注意を要する。 唾液を介して感染する(スプーンの共有、キス、咳・くしゃみ など)。 初めて感染したときに、強い症状が出やすいのが特徴である。
- [治療]
- 解熱鎮痛薬(痛み・発熱を抑える)を処方し、口の中を清潔に保つ。水分補給 (脱水予防)に努める。症状や受診時期によっては抗ウイルス薬を使用することも ある。水分が取れない場合は早めに受診を勧める。 治癒後もウイルスは体内に潜伏し、将来「口唇ヘルペス」として再発することが ある。
口唇ヘルペス

- [好発年齢・性差]
- 特にない
- [好発部位]
- 口唇の粘膜および皮膚
- [症状]
- 口唇の周りに痒みを伴う数ミリ程度の小さな水ぶくれが数個でき、その後、潰瘍と なる。水疱ができる前に「ムズムズする」「ピリピリする」といった違和感を訴えることがある。 原因としては、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)再活性であり、風邪、疲れ、ストレス、強い紫外線などで免疫が落ちた時に発症する。 口の中が痛いと飲み物を嫌がるため、冷たいお水や麦茶、ゼリー、冷ましたスープなど、刺激の少ないものを少しずつ与える。 潰したり触ったりすると、指から目(角膜ヘルペス)や他の部位に広がることがあるので、十分に注意する。
- [治療]
- ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬(飲み薬や軟膏)を処方する。 受診の目安としては、①初めての感染が疑われる(高熱や口内のひどい荒れ)、②痛みが強く、水分が全く摂れない(脱水の危険)、③目の周りに水ぶくれができた、または目を痛がるなどの症状がみられたときである。
ヘルパンギーナ

- [好発年齢・性差]
- 0から4歳までが多く、1歳が最も多い。まれに大人でも発症する。
- [好発部位]
- 軟口蓋、口蓋弓、口蓋垂や口蓋扁桃(扁桃腺)にみられる。
- [症状]
- 突然の高熱(39〜40℃)に続いて上あごや喉の奥の粘膜に直径1〜2ミリ程の小水疱が出現する。発熱は2〜4日で解熱するが、口の中が痛いため不機嫌や哺乳障害、経口摂取不良を起し乳児では脱水をきたすこともあるので注意が必要である。
- [治療]
- 発熱などの症状をやわらげるため解熱剤と、脱水にならないように少しずつ水分を摂るようにする。
手足口病

- [好発年齢・性差]
- 2歳以下が半数を占め、学童期でも流行的発生がみられることがある。
- [好発部位]
- 口腔粘膜、手掌(手のひら)や足(足底や足背)にみられる。
- [症状]
- 感染してから3〜5日後に口の中、手のひら、足底(足の裏)や足背(足の甲)などに直径2〜3mmの水疱を伴う複数の発疹がみられる。発熱は38℃以下のことが多く、高熱が続くことは通常なく3〜7日のうちに治癒する。
- [治療]
- 治療の必要はないが、解熱剤などを症状に合わせて飲ませる。まれに中枢神経系の合併症や心筋炎などが起こる場合もあるので症状が深刻な場合(2日以上続く高熱、嘔吐、視線が合わない、呼びかけに応えない、呼吸が早くて苦しそう、ぐったりしている等)は直ちに医療機関への受診を指示する。
コプリック斑

- [好発年齢・性差]
- 0〜4歳が大半で0〜1歳がピークである。20代での感染も多い。
- [好発部位]
- 頬粘膜にみられる。
- [症状]
- はじめの2〜3日はかぜと同じ症状で、3〜4日で口の中の頬にコプリック斑(白 い斑点)が出現する。これが出れば「はしか」の診断となる。5〜7日で最盛期となり、体や手足、顔に発疹が広がり高熱や強い咳が出る。発疹出現から4〜5日(発病後8〜10日)で解熱し始める。
- [治療]
- 基本的には解熱剤等の対症療法が中心となる。
鵞口瘡(がこうそう)口腔カンジダ症

- [好発年齢・性差]
- 1歳までが多く、乳幼児期にみられる。
- [好発部位]
- 舌尖、舌辺縁や口腔粘膜にみられることが多い。
- [症状]
- 真菌であるカンジダ・アルビカンスが原因で、舌の上や頬の内側、唇の内側、上あごなどにはじめは白いポツポツが出現し、それが広がり舌一面がびっしり白く(偽膜)なることもある。
- [治療]
- 自然治癒がほとんどで、痛みがみられる場合や不快な様子で哺乳が悪くなる場合 には抗真菌薬入りの軟膏を塗布する。

